ヒーローもの。というより、ヒーロー番組。もとい子供番組において、一番必要なのは何でしょうか。
美しい外見のヒーロー?…そうですね。確かに巨大な毛虫がバルタン星人と戦っていてもそんな映像見たくないでしょう…モスラをdisるつもりはありませんよ。
カッコいい武器?…分かります。玩具を売る必要がありますからね。トッキュウジャーは第一話で「あ、これ子供は絶対喜ぶ!!」と確信しました(妖怪ウォッチに最近は押されているそうですが)。
強さ?…そうですね。「愛なき力は暴力。力なき愛は無力」と仏典にも書かれている通りです。
しかし、それよりももっと重要な要素があります。
それは、「信賞必罰」の法則です。
信賞必罰…賞罰を厳格に行うこと。賞すべき功績のある者には必ず賞を与え、罪を犯し、罰すべき者は必ず罰するという意味。▽「信賞」は間違いなく賞を与えること。「必罰」は罪ある者は必ず罰すること。(goo辞書より)
言い換えるなら、
「悪いやつはやっつけられなければいけない」
「自分が起こしたことについては、故意・過失を問わずその報いを受けなければならない」
ということです。
そういう意味だと、ヒーローは、悪いやつに対して「やっつける」ことで罰を与える存在とでも言えるかもしれません。
そして、この「信賞必罰」のルールからは、たとえ物語の主人公…ヒーローやその仲間であったとしても、どんなに情状酌量の余地があったとしても、逃れられてはいけないのです。
例えば、
仮面ライダーBLACKが非情に徹し切れず、シャドームーンにトドメを刺すことを躊躇った結果、ゴルゴムが日本を完全征服する間接的な原因を作った挙句、自分も一度は死亡しました。
ウルトラマン第37話「小さな英雄」で、イデ隊員が「こんな時ウルトラマンが来てくれれば…」と戦いを忘れてボーっとしてなければ、ピグモンはジェロニモンに殺されなくてすみました。
「TIGER&BUNNY」のMr.レジェンドは、「ネクスト」の能力が減退してヒーロー生命が危うくなった時、No.1ヒーローとしての面子を保ちたいがために、他のヒーローの手柄を奪う「やらせ」を行いました。
それに加えて、酒に溺れて妻を毎日鬱憤の赴くまま痛めつけた挙句、止めようとした息子にまで手を上げました。
そしてそれらのツケは、その時偶然発現した息子のネクスト能力によって殺されるという形で「一括払い」させられることになりました。
更にその息子も、精神を病んだ母親に「人殺し」との謗りを受けなければならなくなりました。
また逆に、ドラゴンボールの「人造人間編」では、Dr.ゲロが人造人間を製作しているということを知っても、「まだ人造人間が完成していない間にゲロを倒しに行ってはどうか」というブルマの提案を悟空は蹴りました。
理由は「強いのならば戦ってみたい」という彼らしい理由もありましたが、「まだ何もしていないのに倒しに行くのは道理が通らない」とも主張していました。これには、提案したブルマ本人も納得せざるを得ませんでした。
このように、悪いこと・いけないことをした者には、それなりの「罰」が与えられなくてはならず、「未来に悪事を働く」ということが仮令分かっていても、それを理由に「予防拘禁」してはいけないのです(また同じように、悪いことをしていないのにとばっちりを受けた者には後で埋め合わせがなければいけません)。
しかし、「ハピネスチャージプリキュア」の場合はどうでしょう?
ひめは、幻影帝国のメンバーが封印されたアクシアの箱を開け、幻影帝国を世界中に解放することになりました。
めぐみは、深大寺マミさんのロケット製作の作業の足を引っ張り、「実験が成功するまで白衣は洗濯しない」という願掛けがあるのを知らないまま、白衣を勝手に洗濯しました。それに加え、ブルーとの一時のアバンチュールにうつつを抜かし、誠司をほったらかしにしてその心を傷付けました。
ゆうこは、ファントムの悪事を知りながら、自分たちの手で重傷を負わせた彼を大使館にて介抱して解放しました。
ミラージュは、幻影帝国の首領として、世界の国々を蹂躙し、人々の家を奪い、誰かの家族を奪い続けました。
ファントムは、世界中でプリキュアたちを倒し、変身解除されたバスタオル状態で鏡棺桶に封印して辱めるに飽き足らず、社会生活から切り離すことで彼女たちの大切な時間を奪いました。同時に、彼女たちの家族や友達に、大きな悲しみをもたらしました。
ブルーは…多すぎるので「① 世界観・設定と実際にされている描写の乖離」にて扱いましたね。
他にも、増子さん。彼女は世界中に半裸の少女の姿を全世界に放送し、その尊厳を踏み躙りました。(しかもすごく楽しそう)
全員、何かしらの「悪いこと」をしていますが…その具体的な報いを受けた者は1人もいません。
めぐみはマミさんの白衣の件は有耶無耶にされ、
ひめは、自分のしたことについて罪悪感を抱いている描写がありません。むしろ、嫌われることの方を気にしていました。
ゆうこのやったことは、敵に塩を送っているとしか言いようがない上、ファントムによって鏡棺桶に閉じ込められた世界のプリキュアたちの気持ちを踏みにじる行為です。
ミラージュとファントムに至っては、「気がついたらこうなってました」「あの謎の赤い声に騙された」と、自分たちが悪いことをしていたという自覚があるかどうかすら怪しいです。
というか、完全に被害者ヅラしてます。
というか、完全に被害者ヅラしてます。
ブルーは…言わずもがな。
そしてタチの悪いことに、こいつらは仲間を弁護するにしても、
何の根拠もない「WARUKUNAI-YO!」や「ARINO-MAMA!」を連発してるだけなんですよね。
何の根拠もない「WARUKUNAI-YO!」や「ARINO-MAMA!」を連発してるだけなんですよね。
いおなが「アクシアの箱を開けたことについて反省が見られない」という点についてひめに詰問しても、めぐみがかばって曰く「ひめは悪くないよ!」
ミラージュが自分を捨て、女とうつつを抜かしている事実を指摘しても、キュアラブリーは「ブルーは何も悪くないよ!」
めぐみが「人を助ける意味」について悩んでいる所を、ブルー神は密室に拉致して曰く「君はありのままでいいんだよ」
さっきも言った通り、仮令ヒーローであろうと、イケメンであろうと、悪堕ちした時の記憶がなくなってようと、
悪いことをしたら、それ相応の報いが与えられなければいけません。
仮令実行犯が本人でなかったとしても、ひめは自分が解放した幻影帝国に対する相応の責任を負わなければならないし、
ミラージュがどんなに悪事を働いているとしても、ブルーがミラージュの心を傷付けたという事実には変わりありません。ブルーは悪いです。
めぐみが良かれと思った行動で人に迷惑をかけたということについて、目を逸らしてアナと雪の女王に便乗して「ありの~ままで~♪」と喚いても、根拠がないので心に響かないのです。
彼らがやっているのは、内輪同士での根拠の無い慰め合い・傷の舐め合いでしかないのです。
「いおなの前半でのひめへの殺意全開のあれはどうなんだよ」という質問が来ると思うので、私が最近顔を出しているpiisukeさんの「無手札の幻龍記 第二期」というブログから引用して、彼と同じ私の主張を述べます。
(引用開始)
彼女が開けてはならない封印を解いてしまったことで(一応、「開けてくれ」みたいな声が聞こえたからと後にフォローされましたが)、幻影帝国が復活し、結果的にいおなの姉も戦いに巻き込まれて植物状態同然の状態に陥りました。ついでに言えば、世界が幻影帝国に侵略され、世界のプリキュア達も幻影帝国との戦いに倒れました。
そして、そのことがバレてめぐみ達に嫌われることを恐れたひめは逃げ出しました。この時、ひめにいおなに対する罪悪感や謝罪の感情はまったくありませんでした。
しかし、彼女にめぐみはこう言い出しました。
「ひめは悪くない、悪いのは幻影帝国だよ!」
そして、作中での話の流れとして、なぜか被害者側であり客観的に見て明らかに非はないいおなのほうが、「ひめをいじめる悪いひと」のような描き方をされました。
一応、結果論としては、ひめが(なぜか唐突に)いおなのことを心配する流れになり、ひめがいおなに謝罪し、いおなも自身も冷たくあたっていたと反省し、双方が和解しました。
ひめといおなのこの一連の流れは、恐らく前作のレジーナと真琴で描かなかった部分を流用してみたのでしょう。確かに、一応両方に非があったという流れに持っていき、きちんと和解に尺を用いた分、ドキよりはマシでした。
しかしその過程では、
「気の弱いけど頑張ってるひめちゃんに辛く当たるいおなが悪い、話を聞かないいおなが悪い!!」という偏った視点による描き方をし、明らかに加害者側(ひめ)への肩入れが伺えます。
もう一度言いますが、客観的に見て、いおなには何の非もありません。確かにひめの話を聞かなかったことが問題視されますが、彼女は間接的とはいえ、ひめが原因で理不尽に家族を奪われたわけです。心情から考えて、十分に理解できる行動で情状酌量の余地があります。交通事故で家族を奪われた人間が加害者を憎むのは当然でしょう。似たようなものです。
どんなに理由があろうと、ひめが多くの人に迷惑をかけたことは変わりありません。彼女が最初に被害者に対峙したとき取るべき行動は、謝ることでした。
しかし、誰ひとりとして彼女に謝るよう説いた人間は存在せず、なぜかひめが唐突に心変わりして自発的に謝るという経緯でした。
もちろん結果的にいおなに謝罪をしたのは褒められるべきことですが、その過程は論理的に理解できるものではありませんでした。
(引用終わり)
悪くない、悪くない、と何の根拠もないまま喚くくらいなら、
「本当に何も悪くなかった」というオチをつけるとか、
いくらでも方法はあった筈です。
自分の行動について、自分で撒いた種を刈り取ることすらしないやつらが、口で何を言った所で見る人の心に響くでしょうか?
ヒーローは、主人公だから、イケメンだから正しいのではありません。
正しいことを行い、悪いことしたり失敗をしたりすれば謝り、償うから「正しいヒーロー」なのです。
どうやら制作スタッフはミラージュやファントム、ひめやブルーの悪事の責任も全てラスボスであるレッド1人に押し付けて終わらせるつもりのようですが…ラスボス1人に責任を押し付けて罪を逃れよう、などというのはヒーロー番組でやっていいことではありません。
大事なことなのでもう一度言います。
「他のあの人にも非がある」というのは、本人の犯した悪事をなかったことにしなければならないという理由にはなりません。
そして許されるためには、許されるに値する行為をしなければなりません。
(余談)
ブルー1人を叩いてらっしゃる方々に私から言いたいことが1つございます。
ブルーをdisるのなら、ミラージュとファントムも同じく戦犯としてdisっていただきたいのです。
さっきからしつこく言っていますが、どんな悲しい事情があろうが、わざとじゃなかろうが、それは悪いことをしたのに許される理由にはなりません。
特にファントム。彼は「プリキュアたちが青紙に騙されて最前線に送り出された尖兵である」ということは知っていて、しかも自分自身の意志でプリキュア狩りを行っていました。
ですから、彼は自分の手で青春時代を奪ってきたプリキュアたちに対して謝罪し、相応の償いをしなければいけません。
※ファントムについては私の中に明確な改善案があるのですが、それは後日執筆予定の「こうすりゃよかった ハピネスチャージプリキュア」にて発表いたします