突然ですが、喩え話をします。
仮面ライダーシリーズで、主人公が第一話でいきなり仮面ライダーになったら、何故仮面ライダーに変身出来るのか、どこかでちゃんと説明しないと視聴者がモヤモヤした気分になるでしょう。
ガンダムのパイロットが、何故そのガンダムに乗っているのかを一切描写せずにガンダムパイロットとして50話戦い続けられるでしょうか?
物語の中で一応出来たとしても、それを見ている視聴者から主人公として支持されることはないでしょう。
「こいつ、何でそんな力持ってるの?」
「どこでこのキャラはこのことを知ったの?」
「AさんはどうしてBさんを好きになったの?」
…などなどなどなど、漫画やアニメにおいては、
「何を(what)」「誰が(who)」
「いつ(when)」「どこで(where)」
「何故(why)」「どう(how)」
という、所謂「5W1H」を示す必要性がしばしば出てきます。
例えば…
Q.ウルトラマンは何故地球に来たのか?
A.護送中だったベムラーを追いかけてきたから。
Q.なぜ本郷猛は仮面ライダーになったのか?
A.ショッカーに捕まって改造人間にされたから。
Q.Gガンダムの世界で、金持ちやお偉いさんがコロニーに乗って地球を離れたのはいつでしょう?
A.物語が始まる丁度60年前です。
Q.ドラえもんは、どうしてセワシの祖先であるのび太の所に来たの?
A.セワシの家族を苦しめている、のび太の代でこさえられた借金を作らせないため(そしてそのために、のび太を全うな人間になるよう教育するため)
こんな具合に、お話を楽しむにあたって「5W1H」はしっかりと説明する必要があります。
一方、「ハピネスチャージプリキュア!」はどうか、と言いますと…
これがねえ。全然説明してないんですよ。
説明が必要であろう部分が、ゴッソリ抜けてる。
しかも、最後まで全く説明ナシ。
説明が必要であろう部分が、ゴッソリ抜けてる。
しかも、最後まで全く説明ナシ。
その最たる例を取り敢えず1つ。
「氷川いおなは、『アクシアの箱を開けたのが、キュアプリンセスこと白雪ひめである』ということを、いつ・どこで・誰から・どうやって知ったのでしょう?」
分かる人、挙手お願いします。
………はい、誰も上げられませんね。だってそんなの分かるような描写されてないもん。
そしてこのことが説明されていないのに私が拘るのは何故なのか。
合わせて説明いたします。
合わせて説明いたします。
思い出してみてください。
一年間のうちの前半、ハピネスチャージプリキュアがニチアサのアニメでなかったならば、ひめの寝込みを襲ってシーツの海底に血の海と脳みそ・頭蓋骨諸島をぶち撒けていたであろうほどに、いおながひめを憎んでいた理由を。
それはひとえに、「『アクシアの箱を開けたのが、キュアプリンセスこと白雪ひめである』ということを知っているから」でした。
この「知っている」という部分が問題になるのです。
私たちが「知る」という行為をするためには、普通どうするでしょうか?
本や新聞・雑誌を読んだり、テレビを見たり、ラジオを聞いたり、ググったり、情報が書かれた「何か」の中を探して(あるいは偶然に)見つけるというのが殆どだと思います。
映画の「マトリックス」じゃないんですから、自分では何もしていないのに何かを「知る」ということは出来ません。
「◯◯ということを知っている」なら、「◯◯」に入る話をいつ・どこで・誰から・どうやって見聞きしたのかという話がワンセットになっているのが自然なのです。
ところが、いおなは「自分がひめを憎悪し、彼女から仲間を引き離して孤独にしようと策を巡らしたのは、『アクシアの箱を開けたのが、キュアプリンセスこと白雪ひめである』ということを知っているからである」と明かした時、情報ソースを一言も明かしませんでした。
致命傷なのは、ソースを明かさなかったことです。
致命傷なのは、ソースを明かさなかったことです。
ソースは、その情報が信じるに値するかどうかを決める大変重要な要素です。
大学でレポートを書いたことのある人なら、先生が口を酸っぱくして「文章を引用した参考文献は必ず明記しろ」と言ってきたのを覚えているかと思います。
では何故、レポートでは参考文献を明記しなければいけないのか。
それは、自分の書いたレポートを指して
「これは、主観的な思い込みによって書かれたものではありません。こういう過去のデータや実験の結果に基づいて書かれたものです」
と宣言・照明するためです。
「これは、主観的な思い込みによって書かれたものではありません。こういう過去のデータや実験の結果に基づいて書かれたものです」
と宣言・照明するためです。
逆に、参考文献の明記されていないレポートはどうなるか。
「これは客観的データを完全に無視して、主観的な思い込みとでっち上げ100%によって書かれたものです」と宣言している、と解釈されても文句言えません。
主観的な思い込みなら嘘でもデタラメでも何でも言えるわけですし、そもそも、そんなもの提出したら怒られます。
もう一度言います。情報は、ソースを開示しなければ信頼に値しません。
それを踏まえて、めぐみ・ゆうこから見たキュアフォーチュン(氷川いおな)の行動を見てみましょう。
彼女は、何故か友達であるひめを目の敵にし、
一緒に占いに来た時は「こいつ(ひめ)と縁を切らないと災いが振りかかるぞ」と何の根拠も示さず言いたい放題。
「キュアプリンセスと一緒に居ると不幸になるぞ」とこれまた何の根拠も示さず言いたいだけ言い、
ひめの顔を見る度に何故か憎悪を込めた目を向け、
何故か何かある度ひめの一挙手一投足に狂犬のごとく噛み付く。
挙句の果てに、「こいつはアクシアの箱を開けて世界中に不幸をまき散らした諸悪の根源だ!縁を切れ!」と、自分の言っていることが事実だという根拠を何も示さないまま言ってきたのです。
いおなは姉をファントムに奪われた被害者であり、ひめが全ての元凶だと知っていたということを踏まえるなら、彼女の行動は人間として至極まともと言えた所でしょう。
しかしめぐみとゆうこは、ひめとアクシアの件など知る由もないのですから、普通に考えたら いおなの方がただのチンピラになります。
お分かりいただけただろうか?
いおなが言っているのは「白雪ひめは諸悪の根源だ!縁を切れ!」の一点張りなのです。
1つたりとも、証拠も何も見せずに、です。
1つたりとも、証拠も何も見せずに、です。
意味不明です。
滅茶苦茶です。
幸い、ひめはいおなにアクシアの秘密を暴露される前から勝手にテンパって勝手に自爆してくれました。
それに加えて、めぐみ・ゆうこが人を疑うということを知らない性格だったのも、いおなにとっては幸運でした。
しかしもしも、めぐみかゆうこのどちらかが実際の設定より警戒心の強い人物だったらどうなっていたでしょう?
※かれんさんや美希たん、六花のような子を想像して下さい。
「あなたはその光景を直接見たのか?」とか、「新聞にでも載ってたのか?」とか、いおなの主張の根拠を詰問したことでしょう。
主観的な思い込みの世界は無限大です。「言うだけ」ならいくらでも出来ます。
口先だけで作られた世界にはツチノコだって存在しますし、ニャントロ星人が世界を動かす影の支配者として君臨しています
そしてこの時点では理由は知らないとはいえ、「ひめと縁を切るように自分たちを説得を試みている氷川いおなという人物は、ひめに憎悪を抱いている」ということは彼女の行動を見てめぐみたちは分かっています。
ならばめぐみ・ゆうこの立場にある人間が、次に取る行動は1つ。
「いおなの言っていることが、悪意に基いた嘘である」と疑うことです。
めぐみとゆうこがバk…いや、素直すぎたのでそうはなりませんでしたが、
もしも いおながめぐみとゆうこをひめから何としても引き離したいというのなら、「アクシアを開けて、幻影帝国を現代に蘇らせたのはひめである」という自分の主張が正しいことを示す証拠の1つくらい見せるべきでした。
いおなが
「アクシアの箱を開けたのはひめである」ということを知っている理由は、物語上の理屈で考えるならお姉さんからの又聞きか幻影帝国側の誰かがわざと教えたかでしょうが…本当に何も描写がないので考えるだけ無駄、というのが私の結論です。
物語の重要な核となる話であるにもかかわらず、
いおなの情報源について何の説明もなかったことは、絶対に許されません。
いおなの情報源について何の説明もなかったことは、絶対に許されません。
本来なら、ブルースカイ王国とは縁もゆかりもなかった上に、
ブルーとも一度も会ったこともない いおなが、アクシアの開いた経緯を、
いや、それ以前にアクシアの存在そのものを知っていること自体あり得ません。
ブルーとも一度も会ったこともない いおなが、アクシアの開いた経緯を、
いや、それ以前にアクシアの存在そのものを知っていること自体あり得ません。
いおなが「アクシアを開けたのはひめである」「アクシアの中には幻影帝国の一味が封印されていたが、ひめが開けてしまったことで解放されてしまった」ということを知っているのがどれくらい変か、喩え話で説明します。
「ターミネーター」の世界で、「1997年8月29日の未来に、スカイネットが世界中に核攻撃をしかける」ということを、
ジョン・コナーの父親である「あの人物」や、母親であるサラ・コナーと直接的な関係のないその辺のガキが当然のように知っている(しかもそのことを事実だと確信している)のと同じくらい変です。
ジョン・コナーの父親である「あの人物」や、母親であるサラ・コナーと直接的な関係のないその辺のガキが当然のように知っている(しかもそのことを事実だと確信している)のと同じくらい変です。
※スカイネットを未来で打ち倒すジョン・コナー本人ですら、母親の話が本当だと信じるようになるのはT-800とT-1000の戦いをその目で見た時からです。
別の喩えをしてみます。
「スター・ウォーズ」の世界で、「◆◆◆・◆◆◆◆◆◆◆◆のピーである、ウニャウニャと思われていた※※※※・※※※※※※※※は、★★★・★★★★と●●●●である」ということを、ジェダイやシスと何の接点もない人が普通に知ってるのと同じくらい変です(ネタバレ防止のために伏せ字にしてあります)。
「アクシアの箱を開けたのはひめであるということを知っていて、その結果ひめを憎んでいる」という設定は、「ハピネスチャージプリキュア」の物語(特に前半)の根幹部分になります。
ですが、いおなの立場では、そのことを「知る」ことは特別なことをしなければ不可能です。
なのに「何故知り得たのか」という説明責任も果たさないまま、誰得なプリキュア同士のいがみ合い・憎しみ合い(一方的)を見せられ、私は心底不快でした。
逐一他の「5W1H」についても考えてるとキリがないのでこの辺にしておきますが、他にも「説明が必要なのに何の説明も為されていない5W1H」がハピプリには沢山あります。ざっとすぐに思い付くものを羅列いたします。
「幻影帝国の一味を封印したアクシアの箱を、ブルーが自分で管理せずブルースカイ王国に丸投げしたのは何故か?」
「世界中で幻影帝国のモンスターが暴れているのに、何故国連は何もしないのか?」
「世界中で戦っている、100人を超えるプリキュアたち。彼女たちは、ブルーが愛の結晶なるものを投げつけて命中した女の子の中から選ばれたらしいけど、『プリキュア』がよりによって女性、しかもローティーンの未成年でなければいけないのは何故なのか?」
「クイーン・ミラージュが浄化され、幻影帝国は消滅した。が、マダム・モメールを筆頭とする、他に存在したであろうナマケルダたち3人以外の幹部はどこに消えた?」
「ひめがアクシアを開けたのは、中から助けを求める声が聞こえたかららしい。その声の主は結局何だったのか?」
「結局、ナマケルダたちが悪の道に入った経緯って何だったの?」
「結局、ナマケルダたちが悪の道に入った経緯って何だったの?」
「クイーン・ミラージュ浄化後も、ひめは当然の如く日本に留まっている。しかしひめは『ブルースカイ王国を取り戻す』という物語上の目的を既に達成した。もはや日本に留まり続ける理由がないのにブルースカイ王国に帰らないのは、何故なのか?」
「ハロウィン回の翌週、幻影帝国はキュアテンダーを棺桶から解放し、洗脳した状態で操り人形としてラブリーたちと戦わせた。そんなことが出来るなら、ファントムの封印したプリキュアたちを全員洗脳・解放して数の暴力で憎きキュアラブリーと仲間たちを潰すことだって出来た筈。何故そうしなかった?」
「クイーン・ミラージュは1人で世界中の人間を同時に鏡棺桶に閉じ込め、それらから億単位のサイアークを作り出して世界に一斉攻撃をしかけた。世界を不幸に染めることが目的なら、最初からそうしなかったのは何故か?」
「レッドが用いていた『赤いサイアーク』。あれはどうやって生み出されるのか?」
「レッドは何かある度肉染みニクし実って喚いているけど、一体何があったの?」
「レッドは何かある度肉染みニクし実って喚いているけど、一体何があったの?」
…一応言っときますが、「それやると話が終わっちゃうから」とか「それだと番組タイトルに『プリキュア』の看板ぶら下げてる意味がなくなるから」とか、そういう「メタ視点」からの答えはナシです。
こういう話は、あくまでも「物語上の理屈で」考えなければなりません。