はい、どんどん行きますよ!「りんちゃんさん救済計画」1章始動!
あの高校生(今は大学生)ライダーが登場だ!
※pixivでは単体のお話でも、すげえ長い物は字数の都合で分割します。
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〈4月×日 午後4時22分 フラワーショップ夏木〉
前回に引き続き、ここは西洋的な建物や日本的な家屋が乱雑する奇妙、もといユニークな町、サンクルミエール学園都市。その一角に、「フラワーショップ夏木」は存在する。
そして二人の客が、そんな「フラワーショップ夏木」を訪れた。
流「悪いな、京也。荷物なんか持ってもらって。」
京「いいよ別に。家に向かうついでの買い物くらい、付き合うよ。」
流「家…そういえば、お前の家ってこの先だったな。」
片方の男の名は朔田流星(さくた りゅうせい)。近くの大学、「雄宗大学」に入学したての18(今年度で19)歳。買い物の目的は、ある「友人」と友達になった日からぴったり一年経ったことと、自分と仲間が大学に入学したことを記念するプレゼントの為の花だ。
そしてその横に連れられている、拳法家風の赤い服を着た友人の名は百鬼京也(ももき きょうや)、同じく18(今年度で19)歳。流星と同じく雄宗大学一回生で、流星が法学部に所属する一方、彼は医学部に所属している。
流「…あれ?誰もいないのか?…すみませーん!」
誰もいなかったので、流星は声を出して奥にいるであろう店員を呼び出した。
「はーい!」
40代前半の女性が流星たちの前に現れる。この女性がこの花屋の店長だろうと判断し、流星は注文を始めた。
流「えーっと、明日、祝いたいことがあるので、ちょっと適当に花を合わせてほしくて来たんですが…」
和「あら、誰かの誕生日ですか?」
流「…そうとも言えますかね。」
確かに自分の「誕生日」とも言える。本当の自分をさらけ出し、「あいつ」の友達としての自分が生まれた日…そんな日のための花束だ。特別なものを用意せねば。流星はそう思っていた。
プルルルル…
と、電話が鳴り出した。女性はそれを取る。
和「はい、フラワーショップ夏木でございます…はい。宅配ですね?かしこまりました。住所は…はい…お店の名前は…『アギト』ですね。分かりました。」
女主人はテキパキと対応している。
京也は流星が女主人と話している間に自分の周りの花を見渡した。様々な花が目に入る。よく整えられた花だ。ここで育てられた花はさぞ幸せだろう…などと思いを巡らせていた。
ふと、京也の目にビーズで作られた赤色の腕輪が飛び込んでくる。
京「お、このリング…きれいですね。」
和「あら、お客さんお目が高いわね、それ、うちの娘がデザインしたんですよ。」
京「へえ~…きっと、素敵なお嬢さんなんでしょうね。」
和「アハハ、うちの子褒めても何もあげないよ!」
京也に娘のデザインセンスを褒められて照れる女性だったが、
和「りん~、あたし、宅配に行ってくるからその間留守番よろしくね!」
と一言残し、店の前の車に乗って去っていった。
り「は~い!お客さん、ちょっと待ってて…あ、コラ!ゆう!あい!やめなさい!」
奥から聞こえた自分と同い年くらいの女性…「りん」だろう。その声の後に、サッカーボールで遊ぶ中学生くらいの少年少女が二人、奥から飛び出してきた。
流「おい、君たち、ボール遊びなら外で…」
言うまでもないが、屋内でサッカーをするのは危険極まりないことである。
危ないと感じた流星も二人に声をかけようとする。
次の瞬間、男の子の方が蹴ったボールが二人めがけて飛んできた。
流「!!!!」
ゆ・あ「「あ!」」
ボールは流星の顔…には当たらずにすぐ横の空を切り、何事かと振り向いた京也の顔面を狙い吸い込まれるように近づいていった。
り「危ない!」
思わずりんは悲鳴をあげた。だが、
バシッ!
その心配は杞憂に終わる。
あっさりと京也はボールをキャッチしたのだ。
流星と同じく、ある拳法をやっていて動体視力には自信がある京也のこと、これくらい朝飯前だった。
り「あんたたち!何してんの!お客さんに当たりそうだったじゃない!」
さっきの声の主…もちろんりんのことである。彼女は「ゆう」という名の少年を叱責しようと流星たちの近くに寄って行ったが、顔はサッカーボールに隠れて京也にはさっきから見えなくなっていた。
り「すみません。弟たちがご迷惑を…」
と謝る目の前の女性に
京「いえ、お構いなく…」
と京也は言ってサッカーボールをどけ、ボールを渡そうと女性の顔を見た。
京也の目に飛び込んできた女性の風貌は、
ピンとはねた茶色っぽい短髪。
白地に、胸には花の模様そして赤い袖のシャツ。
活発さを象徴するようなミニスカートと、普通の女性…の筈だったのだが、
り「…あれ?…お…お客さん?」
京「……………………………」
京也はその場で頬を染めて硬直していた。
りんと流星はあわてて京也に近づくが、京也は棒立ちになって動かない。
そんな京也に、流星が話しかけた。
流「…お~い。」
漫画のように顔の前で手を動かし、意識を確認する。
…反応がない。
流「…だいじょぶか~?」
今度は往復ビンタをかまそうとするが、それに一瞬早く気づいたのか、京也は映画「マトリックス」よろしく体を弓のようにしならせてビンタをよけた。
どうやら意識があるまま固まっていたらしい。
流「意識はある、か…あ、そうだ。ボール、ボール…」
安心した流星が京也からボールを取り上げようとするものの、
京「え?…じ、自分で渡せるよ!」
京也は何を躍起になっているのか、慌てた様子でりんにボールを差し出した。
り「お、ありがとうございま~す!…ほら、二人共!このお兄さんに何か言う事あるんじゃないの?」
ゆ・あ「「…ごめんなさい。」」
りんに言われ、二人のわんぱくな子供はペコリと頭を下げた。
そしてりんはボールを受け取るために手を伸ばす。
両手でボール…に触れている京也の手に、りんの手が偶然触れた。
京「!!!!!!!」
何だ。この感覚は。
京也の胸に電撃が走る。
続いて胸を締め付けられるような感覚に襲われ、
さらに首から上に血流が駆け上っていった。
京(~~~~~~~~~~~~~~!!!)
京也は未知の感覚に戸惑い、思わず手を引っ込めてボールを落としてしまった。
り「あらあら…お客さん、大丈夫?」
りんはボールを拾ったあと、店の奥に行ってボールをしまいに入っていった。
ボールの件がひと段落着いた所で、りんは流星の接客に戻った。
り「えーっと、お客様、どんなお花をお探しで。」
流「はい、俺の高校の仲間に大学入学祝いをと思ってるんですが…」
り「ほほう…彼女さんとかですか?」
りんが流星を冷やかした。
まあ、確かに流星には「彼女」と呼べるかどうかは微妙なものの、精神的に惹かれている相手はいるが…周囲からはお似合いのカップル扱いであることは言うまでもない。
流「いや、その、そういうアレでは…」
返答に困る流星だったが、頭の中では
流(…そういえばこの人、前にどこかで会った事があるような気が…ま、気のせいか。)
と考えていたのであった。
そしてその横で、京也はボーッと二人のやり取りを見ていた。
そんでもって気がつくと目の前の女性のことを考え始めていた。
京(この人は一体どんな人なんだろう、何が好きなんだろう…)
自分の中で色々と彼女について考えを巡らせていた京也の耳に、
「りんちゃ~ん!(*≧∀≦*)」
と、姦しい女性の声が飛び込んできた。
声の主は、短めのツインテールヘアー(?)にした赤っぽい髪の女性だった。
り「あ、のぞみ!今日は何しに来たの?」
この女性の名前は夢原のぞみ。1993年11月8日生まれ、19歳。
先ほど京也をおかしくした花屋の長女、夏木りんの幼稚園時代からの幼馴染である。
の「聞いて聞いて!わたし、大学生になって最初の友達ができたの~!」
り「あ、そうか。今日が大学の入学式か~、早いわね。で、どんな人よ。その友達って?」
彼女も大学生になりたてのほやほやである。
のぞみに親しげに話しかけたのを見て、この二人が友人であることを理解するのは流星と京也にとっては容易だった。
の「えっとね…鶏さんみたいな髪で、友達いっぱいいて…面白い人!」
り「…へ?…へぇ~( ̄▽ ̄;)」
仲良く会話する二人の輪に、流星も混ざった。
流「…この方、お友達ですか?」
り「ん?はい、幼馴染の…」
の「夢原のぞみでーす!」
のぞみが言う「最初の友達」が誰のことなのか、読者諸兄には一人心当たりがあるだろう。
もちろん、流星にもそれが誰のことなのか容易に想像がついた。
流「…あの、失礼なことをお聞きしますけど…もしかしてその『友達』って、名前はきさら…」
ブルルル…!
「友達」がその心当たりの存在かどうか、流星は確かめようとしたが、近づいてきたバイクのエンジン音に遮られた。
流星たち4人が振り向くと、バイクに乗っていたのはライダースーツ姿の女性で、背の高い女性を後ろに乗せていた。
り「お、今度はかれんさんにこまちさん!」
バイクを止めて降りてきた二人の女性に、りんが声をかける。
か「暇だったから手伝いに来たわ。」
こ「これ、うちの水羊羹。よかったらご家族で食べて~」
一人は長髪に、流星と京也以上の高身長の女性。
もう一人のショートボブヘアにひと房だけ伸ばした髪の女性もヘルメットを脱ぎ、りんと仲良くしゃべり始めた。
りんに差し出された水羊羹の箱の包装紙に書かれた「こまち」という文字を見て、見覚えのあった流星が口を開いた。
流「『こまち』…ってことはあんた、雄大そばの商店街にある和菓子屋の娘さん?」
「雄大」とは流星と京也が入学した大学、「雄宗大学」の略称である。
自分の店を知っている。そう分かったショートボブヘアの女性、こまちは口を開いた。
こ「ええ、そうよ~…ところで、あなたはどなた?」
流「俺はただのこの花屋の客です。ちょっとこの店に花を買いに来てて…アダダダ!!」
京也がいきなり後ろ手を取った。
京「女の人の胸ジロジロ見るなんて…流星くん、友子さんに言うよ。」
指摘された通り、流星の目線の先はセリフが進むにつれて、こまちのライダースーツの内側から激しく自己主張する巨大な膨らみにスライドしていた。
やはり曲がりなりにも流星は健全たる男子であった。
だがそれでもやっていいことと悪いことがある。
京也は流星をたしなめたのだった。
り「…あーあ。イケメンが台無し。」
か「…男ってホント馬鹿よね。」
呆れたように、長髪の女性、水無月かれんもりんと一緒に言い放った。
流「いああああああああ…痛い!痛い!すみませんでした!すみませんでした!京也!お前もやめろ!腕が!腕がもげる~~( >Д<;)」
呆れる女性たちの横で慌てていたのは流星だった。
「友子」とは、さきほど言った「精神的に惹かれている相手」のことである。
友子は嫉妬深い。
万が一ほかの女性にうつつを抜かしていたことが彼女の耳に入れば、ただでは済まない。
嫌だ。呪われるのは困る。
そう思った流星は必死に謝った。勘弁してくれ。許してください。
そんな流星の手を、京也はパッと離した。
京「思い知ったか、このッ」
京也はその場に倒れた流星を小突き、それに4人の女性たちも続いたのであった。
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はい、ここで一旦切りマンジャロ!すぐ次投下するから待っててな!